2010年09月11日

考証編(4)

もう時機を逸してしまっているなあ。
とりあえず大西科学著「ジョン平と去っていった猫」の、最大の疑問点だけ提示しておこう。
つまり【その思考回路はないだろ、常識的に考えて】。

この本の最大の問題点(と、私は考える)は、三葉の行動だと思います。
三葉は、
学校の教室で、賞金稼ぎに追われる→逃げて、商店街を走る→学校の教室に戻る
という行動を行っています。
しかしこれは納得いかない。
三葉は、賞金稼ぎに知られている場としては、学校の教室だけなわけです。
なんでそんなところに逃げこむのか。
常識的に考えて、逃げるのは、賞金稼ぎに知られていない(と、三葉は考えるはずの)、重の家、もしくは鈴音の家でなくてはならないはずなのです。
この状況で学校の教室に逃げ戻るという描写をするためには、
1)学校の教室以外、逃げる場所がないという描写をする。たとえば、重の家と鈴音の家に、どちらもあやしげな見張りが立っているなど。
2)三葉が、すでに発見されたねぐらにあえて逃げこむほどの、猫並みの馬鹿であるという描写をあらかじめしておく。たとえば、賞金稼ぎにマタタビを投げられて麻薬中毒患者のごとく酩酊するなど。
どちらかがなくてはいけません。しかし、作者はそのどちらもしてはいない。
よって、読者にとっては理不尽な行動をとってしまっているわけです。
posted by しもりん at 06:06| Comment(10) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月29日

考証編(3)

 大西さん震駭しなくていいです。別にたいしたこと書かないし。

【視点の乱れは精神の乱れ】

 さて、ライトノベルではおおまかに、一人称と三人称の視点、すなわち語り口があります。おおざっぱにいうと、「僕は」「俺は」で始まるのが一人称、登場人物の氏名を使って「○○は」「彼は」で始まるのが三人称、ということですね。
 他に二人称というのがありますが、まあ、太宰治の小説や、書簡体の文章で使われるくらいで、ライトノベルでは無視してもいいでしょう。

 一人称の特徴としては、
・主人公視点で物語を語るため、主人公に感情移入しやすい。
・主人公の限られた知識で語るため、物語の全貌がわかっていなくてもいい。途中から世界観の修正も可能。
・叙述トリックが仕掛けやすい。いやそれは探偵小説の話か。SFもあるな。

 三人称の特徴としては、
・さまざまな登場人物の視点、さらに神の視点から物語を語ることができる。
・最初から物語の全貌を語ることができるため、うんちくが語りやすい。

 というところでしょうか。
 作者からいうと、物語が最後までかっちりと出来ているなら三人称が書きやすく、いきあたりばったりでいくなら一人称が安易、ということができるでしょうか。

 それぞれに長所と短所のある一人称と三人称ですが、むろん、どちらかを選択し採用するのが望まれます。
 一人称と三人称をごっちゃにすると、たとえば次のように、

 アリスは 流れるような足さばきで(三人称視点)
 俺の腕を掴みつつ、(一人称視点)
 背後に回る。(三人称視点)
 そのまま肩関節を固められてしまう。(三人称視点)
 直立したままだというのに、あっという間に動きを封じられた。(一人称視点)


 という、めくるめくような視点移動で目眩を起こさせることになります。意図して目眩を起こさせるという文学的効果を狙うならいいのですが、ライトノベルでそんなもん狙ってどうするんだって気がしますよね。
 やはり、視点はどちらかに絞って、読者を安心させるのが、ライトノベルとしては正解でしょう。

 ちなみに「ジョン平と去っていった猫」では、さすがに、このような初歩レベルのミスは見つかりませんでした。
posted by しもりん at 23:53| Comment(4) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月27日

考証編(2)

 あの膨大な検証を無駄にするのは惜しい。
 できれば、「おかま」本編に検証サイトの検証を加え、ファミ通文庫で「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長・検証編」として出版しなおしてほしいと思うのです。むろん、哀川氏は印税の請求権は喜んで放棄されると思いますし、検証サイトの有志も有用な出版なれば使用は快諾すると思いますので、バカテス始め著作権を侵害された著者に印税をお詫びとして進呈できるのではないでしょうか。

 ただ、著作権侵害以外の点では、哀川氏のみ糾弾されるのは、ひょっとしておかしいかもしれない。ひょっとするとライトノベルではわりと普通に、視点の乱れが生じていたり、アクションシーンで超絶無理秘儀が一般に発生したりしているのかもしれません。

 そこで、今回は比較のために、おかま以外のライトノベルを考証してみようと思います。かといって、私の所有しているライトノベルは、あの人の作品しかない……

 というわけで大西科学「ジョン平と去っていった猫」(GA文庫)を比較材料として採用。理由は、デビュー2作目ゆえ、、デビューの緊張感が薄れ、かといってまだルーティーンができてもいない、もっとも不安定な時期の作品で、もっともボロが出やすいと思うからなのです。さあ大西さん震駭せよ。
posted by しもりん at 21:12| Comment(1) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月20日

考証編

 おおせの通り、ヤジウマでシリウマでメシウマでございます。はいはい申し訳ありません藤岡様。サーセン。

 などとやさぐれつつ始めてしまいましたが、「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」(略称:「おかま」)のコピペ騒動、これは単なる愉快犯の集いではなく、ひとつの有意義な結果をもたらしたのではないか、と思うのですよ。
 もちろんそのひとつは、上記検証サイト等によりコピペが検証され、盗作を許さないという姿勢が出版社へと伝わり、絶版・回収へと至らしめたことであるわけですが。

 もうひとつ、2ちゃんねるのスレに誰かが書きこんでいたとおり、

「江戸時代、蘭学医たちは処刑された 犯 罪 者 の遺体を解剖して人体の構造を学んだ」

 絶版回収作品「おかま」という、擁護の少ない環境において、盗作以外にも作品のあら探しがスムースに行えたため、作品中の変な表現、変な行動、変な設定など、さまざまな点が考察できたわけですね。

 そこで指摘されたところをバーバラ様にならって、箇条書きでまとめてみると、

・視点の乱れは精神が乱れている証拠だ!(ゾル大佐談)
・アクションシーンはトンデモの宝庫
・その思考回路はないだろ、常識的に考えて

 とでもなるでしょうか。
posted by しもりん at 15:19| Comment(1) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月15日

お詫び

この度はこのような事態を招いてしまい、まことに申し訳ございませんでした。
ブログ作家としての意識の低さ、認識の甘さを深く反省しております。井上堅二先生をはじめ先生方、Seesaaブログの皆様、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを心からお詫び申し上げます。
拙著を読んでくださった読者の皆様、続編を楽しみにしてくださった皆様には本当に申し訳なく思っております。まことに申し訳ございませんでした。

shimojo
posted by しもりん at 21:36| Comment(1) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月13日

実践編 第六章

 太郎丸たちが堺に来て、 二度目の春が訪れていた。
 港に続く広い坂道の両脇には 、風で花びらを鮮やかに舞わせる 桜が咲き乱れている。
 茶人ならばこの景色に何らかの感動を抱くのかもしれない。
 しかし亡命者である太郎丸にとってはただの見慣れた港の風景だ。
 これといって雅な考えも浮かばないまま、太郎丸は桜並木から視線を切って坂道を上り始めた。
 晴れ渡る青空。澄んだ空気。暖かな日差し。

 そのうららかな空気にそぐわない怒鳴り声が、太郎丸の耳をつんざいた。

「死になさい、この色情悪魔!」
「いや、ちょっと、それは、誤解だ」
 炎狗がいつものように、三十郎の胸ぐらを掴んで責めたてている。
「誤解もなにも、この白粉の臭いは、また乳守の遊郭から朝帰りでしょ!」
「いや、実はな、さっき娘にぶつかって」
「どこの娘が、そんな白粉つけて歩いてんのよ!」
「いや本当は、弥九郎どのに誘われて」
「なに人のせいにしてんのよっ! この淫蕩な色情悪魔っ!」
「罵倒がレベルアップしている?」
 逃げようとする三十郎の先に回り込み、炎狗は流れるような足さばきで三十郎の腕を掴みつつ、背後に回る。そのまま肩関節を固められてしまう。直立したままだというのに、あっという間に動きを封じられた。
「――死になさい、この卑劣で淫蕩な最下級の色情悪魔っ!」
「罵倒の最上級?」
 ごき、と、遠くからでも音が聞こえた。
posted by しもりん at 03:50| Comment(0) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月31日

ううう、すんません。

この先どう書けばいいのか思いつかなくなってます。
先の設定は考えているんですが、そこまでどう繋げればいいのか。
展開に困ったときはどうすればいいか、バーバラ様、どうかご教示ください。
まさかライトノベルで「余談である」とか、「この物語の前途を思いきって話してしまおう」とか、司馬遼太郎のパクリはできないだろうし。ううむ。
posted by しもりん at 18:06| Comment(3) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月16日

実践編 第五章(続)

「超ライトノベル実践作法」(略してちん法)より

******

 その夕方、三人娘はひとあし先に京にのぼっていた。
 羽柴秀吉の軍勢が駐屯している、法華寺。
 門は兵士たちが鎗を持ち、守っている。
「木さる、あんたの出番だ」
「よしきた」
 炎狗の指示で、木さるは夕闇にまぎれ、寺の高い塀をひょいと跳びこえた。
 樹木に隠れながら移動し、境内をぐるりと見てまわる。
 建物の四面を兵士がかため、侵入する隙はない。
(これは、夜にならんと駄目だな)
 木さるは境内の大木に登った。
 そこから兵士の目をかすめ、井戸に布袋を投じた。
 布袋のなかには、眠り薬が入っている。
 すぐに昏睡して怪しまれることがないよう、わざと効き目を弱くしている。

 深夜、三人娘はふたたび法華寺に来ていた。
 夕方と同じように、木さるは塀を跳びこえ、境内を観察してまわる。
 やがて戻ってきた。
「見回りの兵は二十名ほど。あとは寝ている」
「なんとかなるな」
 炎狗はうなずく。
 木さるは塀に跳びのり、そこから縄をたらした。
 炎狗と冰雉は縄をつたわって塀を乗り越えた。

 警戒の兵士も、半分くらいは居眠りしている。
 眠り薬が効いているようだ。
 木さるは寺に梢を垂らしている大木にするすると登り、そこから寺の屋根に跳びうつった。
 屋根瓦を数枚はがし、そこから天井裏にもぐりこんだ。
 炎狗と冰雉は兵士がみな居眠りしている側にまわり、床下にすべりこんだ。
 床下を移動し、それぞれの部屋の物音をさぐっていく。
 どの部屋でも、兵士か坊主のいびきが聞こえる。
(この部屋も違うか)
 さらに奥に移動しようとしたとき、殺気をおぼえた。
 その瞬間、冰雉の手から手裏剣が投じられ、数個の低い呻きがきこえた。
 手裏剣には、瞬時に能力を破壊する、神経性の猛毒が塗ってある。
 しかしさらに、数個の殺気が殺到してきた。
 炎狗は両手に短剣をかまえ、殺気に立ちむかった。
 殺気のど真ん中を駈けぬけた。
 ふたりの男が脇腹をえぐられ、死骸となった。
 短剣にも猛毒が塗られていることは、いうまでもない。
 さらにふり返って反対側に駈けぬけ、死骸はまたふたつ増えた。
 冰雉のまわりにも、死骸がころがっている。
「全員、やったか」
「おそらく、そうです」
 声を出さず、口の動きだけで会話したふたりは、奥へ移動した。
 床の上から、女性の静かな寝息が、ひとつだけ聞こえてくる。
(ここか)
 炎狗は、そっと床下から、畳を持ちあげ、部屋の中をうかがった。
 広い部屋に、女性がひとり寝ている。年のころは三十をいくつか越えたくらいだろうか。
 細面の顔立ちと、いつも微笑をたたえたような口元が、太郎丸に似ている。
(間違いない。この人だ)
 炎狗は畳を戻し、床下で冰雉と無言の会話をかわした。
「女をひとり連れて、この寺を抜け出せるか」
「無理でしょう。兵士が多すぎます」
「だな」
 炎狗は畳をふたたびもちあげ、一枚の紙を六角形に結んだものを、布団の中にすべりこませた。
 その紙には、
「太郎丸様無事に候。近日出逢い叶うべく候」
 と書いてあった。

 ふたりは寺の床下なか抜け出し、木さると合流した。
 木さるの手甲にとりつけられた鉤爪に、血がにじんでいる。
「天井には何人いた」
「四人。たぶん甲賀者だな」
「床下には十人いた。かなりな警戒っぷりだな」
「そんなに重要人物なのか、太郎丸のおふくろってのは」
「わからん。蛇蝎道人さまは、教えてくれないんだ」
 炎狗の口の動きに、不満がにじんでいる。
「まあいいさ」木さるは、塀に跳びうつった。
「こっちの仕事は終わったんだ。これでいいだろ」
 みっつの黒い影は、寺を離れた。

******

これで5枚程度。トータル85枚か。
やっとバトルらしきものが出せたよ。
posted by しもりん at 09:33| Comment(1) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月13日

実践編 第五章(続)

「超ライトノベル実践作法」(略してちん法)より

 私用のため、また間が開いてしまいました。すみません。

******

「太郎丸さまは、これまでどうなさったのですか」
 奈々が尋ねた。
 太郎丸は、館を逃げのびてから堺に来るまでのあらましを、ざっと話した。
「まあ、太郎丸さまも宇喜多さまのお城からいらしたのですか。実はわたしも、宇喜多さまから小西さまへとお世話になって、ここに住まわせていただいているのです」
 太郎丸は驚いた。奈々姫も、宇喜多どのの手によって、この堺へ連れてこられたのか。
「なんだって宇喜多どのは、ぼくたちにこんなに親切にしてくれるんだろう」
「わかりませんわ。でも、ひとつだけ思いあたることがあります。父のところへは、宇喜多さまからのお客様が、何回か訪ねていらしたことがあります」
「奈々姫の父上は、宇喜多どのに仕えたことがあるとか?」
「いいえ、わが家は代々、太郎丸さまのご家来でございます。でも」
 奈々は、すこし頬を染めた。
「宇喜多さまのおかげで、わたしたち、ここで逢えたのですもの。宇喜多さまに感謝しております。わたし、もう、ひとりぼっちだと思っておりましたのに、太郎丸さまにお逢いすることができたのですもの」
「奈々姫……」

 そのとき、襖ががらりと開いた。
 炎狗が邪悪な笑みを浮かべながら立っている。
「あら、お邪魔だったようね。おふたりで仲良くされていたところを」
「そ、そんなんじゃないったら」
 太郎丸は顔を赤くして否定した。
「まあまあ」
 炎狗はにやにやしながら、腕組みをしてふたりを見おろした。
「やっぱり若様と姫様ねえ。お雛様みたいで気品があるわ。あたしみたいな下賤のものには手の届かない感じがするわ」
「ご用件はなんでしょうか」
 奈々は少しきっとなって、切り口上で炎狗に言った。
「あら、怒らせちゃった? ごめんね、なにしろ下世話な生まれなもんだから」
 炎狗はにやにやからにたにたへ笑みを変化させ、ねちっこい口調で言った。
「いや、別にたいした用事じゃないんだけどね、ここの主人、小西隆佐さんが挨拶をしたいってさ」
「な、なんで、そ、そんなに、だ、だいじなことをっ」
 焦りのあまり太郎丸は言葉につまった。
「いやあ。あなたたちの反応が拝見したくて」
 炎狗はしれっと言うと、去っていった。

 太郎丸は茶室に案内された。
 小西弥九郎の実の父親、小西隆佐が、煮えたぎる釜の前に座って、静かに茶をたてている。
 予想していた威風堂々たる雰囲気ではなく、どこか優しげなものを感じさせるのは、茶人としての修練のたまものかもしれない。
「長旅でお疲れのことでしょう。まずは一服」
「え、でも、ぼく、お茶のやりかたは……」
 うろたえる太郎丸に、隆佐は微笑んだ。
「茶に決まりなどはありません。いちばんおいしいと思うやりかたで、飲めばいいのです」
 隆佐にすすめられ、太郎丸はおずおずと、茶碗に手を伸ばした。
 ええと、たしかこの模様のついたほうじゃないところに口をつけて、だからお茶碗をぐるっと回して……などと、うろ覚えのやりかたで、太郎丸は熱い緑の苦い液体を、ぐっと飲んだ。
「さて。その茶に毒が入っていると申しあげたら、どうなさいますかな」
 隆佐の微笑みのなかの目が、ぎらりと光った。
「え」
 思わず茶碗を手から落としそうになり、太郎丸は冷や汗をかいた。たぶん、この茶碗、金何百枚も何千枚もするんだろうな。
「冗談ではございませぬ。死ぬほどの毒ではないが、普通の者が飲むと手足がしびれ、感覚がなくなり、立っていられなくなるはず」
「う、嘘でしょ」
「本当でございます」
 太郎丸が見た骰イの目は、真剣だった。嘘や冗談とは、思えなかった。
「え……」
 太郎丸はそっと自分の腕をつねってみた。痛い。べつに何も、おかしなところはない。
「左様でしょうな。それこそ、太郎丸どのが毒味の衆の血筋という、なによりの証拠」
「ちょっと待ってください」
 太郎丸は、骰イの話をさえぎった。
「毒味の衆って、なんですか。あの三人の女のひとも、毒味衆といってたけど」
「ふむ。毒味の衆についてお話しするには、まず私の稼業のことからお話しなければなりません」
 骰イは、茶をぐっと飲んだ。

「私のところでは、薬を扱っております。薬も量を過ごせば毒となり、毒も少量なら薬となる。そもそも薬と毒とは表裏一体。薬は毒となり、毒は薬となる」
「なんだか、むずかしそうな話ですね」
「簡単なことです。私は表の仕事として薬を売っておりますが、裏の仕事では毒を売っております。そのお得意先のひとつが、宇喜多さま」
(なるほど、そうつながってきたのか)
 おだやかならぬ告白をしながらも、骰イは穏やかな笑顔でいる。
「私どものように、裏で毒を扱っている仲間は、ひそかに毒座を作っております」
 座とは、いまでいう同業組合のようなもの。
 同じ商品を扱う商人どうしが連合して、仕入れや売りさばきの手間をはぶいたり、新規商人の参入を拒んだりしていた。
「私ども毒座の仲間、そして宇喜多さまのようなお客様、それらをひっくるめて、毒味の衆と呼んでおります」
「で、その毒味の衆っていうのと、ぼくと、どんな関係があるんですか」
 太郎丸は思いきって聞いてみた。
「あなたのお母様が毒味の衆でした」
 骰イは、ずばり答えた。
「毒味の衆は日常、わずかずつの毒を飲み、徐々に毒に身体を慣らしていく。やがて毒に耐える身体となり、どのような毒も効かなくなる。そういうお母様の乳を飲んで育ったあなたも、毒に耐える身体となった。太郎丸どのには、乳母はおられなかったでしょう」
「うん……」
 そういえば物心ついてからずっと、母とふたりきりだったような記憶がある。
「私から話せることはこれまでです」
 骰イは茶碗をかたわらに置いた。
「京へお行きなさい」

******

 これで7〜8枚。トータル80枚くらい。
 なんか説明がくどいな。だれそうだ。ちょっと書き直したほうがいいかも。
posted by しもりん at 21:47| Comment(2) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月08日

実践編 第五章

「超ライトノベル実践作法」(略してちん法)より

******

「うわあ、大きいなあ」
 港から堺の街並みを見た太郎丸の、最初のひとこと。
 屋敷の数が多いのはもちろんだが、その建物が大きい。
 白いしっくいで塗られた壁と、黒いれんがの屋根。
 赤や青や色さまざまな店の看板。
 日本のほかの街にはみられない光景だった。
「どうしたの。あんたも太郎丸さんみたいに、素直に田舎者らしくびっくりしなさいよ」
 船酔いでぐったりしている三十郎の脇腹を、炎狗が肘でつついた。
「うっ……」
 言葉も出せない三十郎は、えづくような呻きをあげるのみ。
「おいおい、ここで吐いたら置いてくぞ」と木さる。

 小西弥九郎は、一行を薬種問屋、小西屋の別邸に案内した。
 別邸は、問屋の屋敷のはす向かいにある。
 広くて人がおおぜい出入りしている問屋に比べ、こちらは広壮な屋敷だが、人通りがない。
 入り口で使用人になにごとかささやいた弥九郎は、一行を奥の座敷に案内した。
「初めての船旅でさぞやお疲れでしょう。こちらでゆっくりとおくつろぎください」
 そう言うと弥九郎は去っていった。
「お疲れのようですわ。特にこちらの方は」
 皮肉たっぷりに言う炎狗の言葉が、耳に入ったかどうか。
 三十郎は疲れきった様子で、出された茶を飲む気にもなれないらしい。
「こちらの方へは薬湯をお願いします。鹿茸大補湯がよろしいでしょう」
 冰雉はお茶を出してくれた女性に、冷静な口調で告げた。
「い、いや、拙者は……」
「あんたは黙ってりゃいいの」木さるは決めつけた。
「静かなところだね。外のにぎわいがぜんぜん聞こえないや」
 太郎丸は感心して言った。
「こちらは小西様のお休みどころですから」
 冰雉は静かに言った。

 やがて弥九郎が戻ってきた。
「太郎丸さま、お引き合わせしたい人がおります。こちらへどうぞ」
「では拙者も」と、あわてて立ちあがろうとした三十郎を、弥九郎は押しとどめた。
「いえ、できれば太郎丸さまおひとりが、よろしいでしょう」
「し、しかし……」
「どうか、わたくしどもをご信頼ください」
 弥九郎は微笑んで言う。
「あんたはここで体力回復してりゃいいの」
 炎狗にすそを引っ張られ、三十郎はよろめき崩れた。

 屋敷のさらに奥、廊下をいくつか曲がった先に、小部屋があった。
「こちらでお待ちです」
 弥九郎はうやうやしくお辞儀をした。胸の十字架が揺れる。
 ふすまを開けた先に待っていたのは、太郎丸が予想していたこの家の主人、小西骰イではなかった。
 女性だった。それも、少女。
「……奈々姫」
 太郎丸は呆然としながら、なかば無意識でつぶやいた。
「お久しゅうございます」
 少女はふかぶかとお辞儀をした。
 身を起こして太郎丸を見つめる大きな目から、涙がいくつもこぼれる。
「生きていたんだ」
 うわごとのようにつぶやく太郎丸は、呆然と立ったままでいる。
「どうぞ、こちらへお座りくださいませ」
 上座を小さな掌で示し、少女は涙をこぼしたまま微笑した。

 奈々は影石河満の家老、西村勘佐の娘。
 河満の妻、絹が西村家につながる血筋だったこともあり、両家は主人と家来という関係をこえて親密だった。
 西村勘佐が娘の奈々をつれてご機嫌伺いに来ることもあり、逆に太郎丸が西村家に遊びにいくこともあった。
 ひとつ年下の奈々を、太郎丸は妹のようにかわいがった。「姫」と呼ぶのは、太郎丸が奈々をからかってつけた呼び名である。
 春のある日、太郎丸と奈々のふたりきりで、山菜を摘みにいったときの記憶がある。
 そのとき、奈々はざるいっぱいに植物を載せて、太郎丸のもとに小走りでやってきた。
「太郎丸さま、ほら、こんなにいっぱい」
 ざるの中にはおけら、ととき、のびる、たらの芽、いかりそうなどの山菜の上に、紫色の小さな花がいっぱいにちりばめてあった。
「ばかだなあ。これ、すみれじゃないか。食べられないよ」
 という太郎丸に、奈々はにっこりと笑って、
「だって、こんなに奇麗だったんですもの」
 と太郎丸の横に座り、すみれの花を集めて、細い指で茎を編みだした。
 太郎丸がぼんやりとしている間に、奈々はすみれの花の冠を編みあげ、
「はい、これ。太郎丸さまにあげる」
 と、太郎丸の頭の上にのせた。
(この子は、ぼくに恋心を抱きはじめている)
 と感じた太郎丸だったが、その後はなにも起こらず、破滅の日をむかえた。

「太郎丸さま、なにを考えこんでいらして?」
 むかしの記憶を辿っていた太郎丸は、奈々の声でわれに返った。
「……いや、別に」
 太郎丸は頭を振って過去の淡い記憶をふりはらった。それよりも、聞かなければならないことがある。
「奈々姫のご両親は?」
 奈々の目から、また涙がこぼれた。
「……そうですか」
「いえ」奈々は、小袖の裾で涙をふいた。
「父は立派に戦って死にました。武人としていさぎよい態度でした。母は陵辱のはずかしめを受ける前に、自分で命を絶ちました。武人の妻としていさぎよい態度でした」
「それはぜんぶ、ぼくのせいだ」
 太郎丸は暗然とつぶやいた。家臣の安全は、頭領が守ってやる義務がある。それを怠り、砦をいとも簡単に破られ、自分もろとも家臣とその家族を殺してしまった父は、なにをしていたのだろう。それをただ見ていることしかできなかった自分も、なにをしていたのだろう。
 ここに両親を殺された少女がいる。
 一家皆殺しにされた家臣もいる。
 ぼくは、そんな人間たちを放っておいて、母親さがしをすることが許されるんだろうか。
「太郎丸さまのせいではございません」
 奈々は、暗い顔になった太郎丸を慰めるように言った。
「すべては戦国の世のならいでございます。しかたがなかったんです」
「しかたがなかった……」
 太郎丸は奈々の言葉を反芻した。
 本当に、しかたがなかったんだろうか。
「わたくしは、太郎丸さまが生きておられたことだけで、本当に嬉しゅうございます」
(妹だと思っていたら、姉さんみたいじゃないか)
 太郎丸は奈々の成長を感じた。
(ぼくより、ずっとしっかりしているよ)

******
 これで10枚くらい。
 トータル70枚くらい。全体の4分の1ですね。
 しかし、バトルがねぇぇぇぇぇ。こんなことでライトノベルとしていいのだろうか。

 あと幼なじみをつい出してしまいました。バーバラ様、まことに申し訳ありません。
posted by しもりん at 08:20| Comment(0) | ラノベ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。